dmachiの日記

読書メモなどです。

読書メモ

①『橋本治内田樹』2008年。タイトルの二人の対談だけどけっこう長い。雑多な話題。その雑多でとりとめもない話だからまとまりがないという欠点があると言えるが、そんな話の流れの中の言葉だからこその受け取り甲斐もあるかと思った。私が二人の文章を多少読んできて贔屓にしているからってこともある。けど橋本治という人の話は不思議といえば不思議で、なるほどというような真に迫る言葉をごく普通に吐く。彼は自他共に職人的だと言われることもあるが、確かに彼の言葉は、理論の言葉や、学問の言葉ではなく、人の言葉なのだ、というところが強く感じられて、なおかつその語るものはものすごく天才的で参考になるところが多く、そこが一読者にとっての魅力。かなり好きな本になった。

②『「言葉」が暴走する時代の処世術』2019年山極寿一、太田光。山極寿一という人はとても説明がうまい人だと感じる。膨大な背後の経験知や知識の元で、現代の平場に通じる言葉で語る。人間とゴリラを分けるのは問いを立てる力で、それはこれまで見てきた記憶にあるバーチャルなものを現実に当てはめて考える力だという。言葉が平易だからああそうかと通り過ぎるところを、ちょっと考えたら言葉の性質というものを考えさせられる。今の日本については、型が失われてきたから明示的なルールが必要とされ、その端境期であると。型はその一つには言葉を用いずに何かを伝える仕組みで、型にはまったほうが人は楽だと。そうでなければ自分の頭で全部考えなければならなくなる。という。また、今西錦司を出しつつ生物はすべて主体性を持ち生きること自体が主体性であり、生きて動くということは与えられた環境の中で自らの動きを作ることであり、その動きに応じて周りの環境が変わる、と、主体性の説明があれば、あるいは、第一次産業は、自分の身体を通じてその土地や自然と「対話」する仕事なわけで、それは過去を必ず体現している、と自然と人のつながり関わりを表す。気持ちを伝えあうには、ただ会話をするんじゃなく何かを一緒にしたほうがいいと、言葉以外の人と人の場を共有することで生じるものの大切さを普通の言葉で訴えかける。自らの体験や身体的な信頼感にまで落とし込んだ言葉の説得力を自らに持っている、ということが豊かなことかもなあと思った。対談の一方、この本では太田光は少し聞き手側だった。彼の魅力は人や考えをとにかく分け隔てないところにあると思う。そしてその魅力は人と人ががやがやと交流する中で生かされやすいのかなとも思ったがよくわからないちゃわからない。