dmachiの日記

読書メモなどです。

読書メモ

宮内悠介『アメリカ最後の実験』平成28年。面白くてすっと読めた。セリフが面白かった。セリフにうんちくがあって面白かったり、さりげない心のやり取りが味だった。地の文も著者のセンスという言い方でいいと思うが、語り口に思想ないしスタイルが出ている。それが特徴的だった。登場人物の人生の遍歴の途上で、音楽が鍵となり、それぞれが困難を抱えながらある場所に立っていく。
どこか読者のいる場所に迫るのが薄く感じて、エンタメなんだろうなと思ったが、例えば、人が声を出しそれを耳が聴く、そこに自我が生まれる、などという言葉が面白い。音楽や物事全般に対する考え方は随所に表れる。その内容はどうだろうかと思うものもあれどストレートさがいい。
この小説で音楽は、人物それぞれの音楽なのだが、ある過程を経て、音楽が人物それぞれの内心の希望を生じさせる。何かを望む行為が消えているかのような人物達に。といった風に勝手な解釈をした。そんな考えを生じさせることも小説を読む悦びの一つなのかなと思った。