dmachiの日記

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読書メモ

『資本主義の終焉と歴史の危機』水野和夫著2014年。
面白くてためになる本という感じだった。基本的には新自由主義、グローバリゼーションがデータと共に批判され、16世紀ヨーロッパと21世紀先進国の状況の相似からいろいろ語られる。前者は陸から海への拡張がイギリスによって行われ、後者ではアメリカによる金融空間の拡張が行われたという。ただ金融帝国によるグローバル化は、国家の統制がきかないどころか国内に、資本主義にとって必要な周辺を作り格差を広げる。エネルギーの安価な調達にも限界があり、つまりもう、そういう今の近代の資本主義は限界だ、という。例えば、資本と労働の分配比率は七体三くらいだったが、90年代以降資本側が多くなり、賃金が低下している。例えば、世界の人口の十数%程度が豊かであったことを踏まえると、今後全世界に広まっていくのには限界がある。例えば、単純に供給過剰で需要が無い。例えば、経済成長しようとして株価が上がり金融資本が増したら、バブルが起きしわ寄せは被雇用者、国民にくる。

著者は蒐集という概念を鍵とする。ヨーロッパ、キリスト教、に蒐集により社会の秩序が保たれるという観念があるといい、それが資本主義につながる。メディチ家からオランダからイギリスからアメリカまでお金をコレクションしてきたと。日本はその蒐集の限界に世界で最初にぶち当たった。そして成長教はもうやめて定常経済をさしあたり維持するべきだと。なぜならこの数百年の近代のシステムの限界の次はまだ無く、中世から近世を経て近代になる中で、デカルトやアダムスミスやホッブズが出てきたように、無謀な近代の引き延ばしはやめて新しいものを待つべきだと。

長い16世紀の後はイギリスが覇権を握ったが、21世紀の後はもう成長の伸び代が無いということだとすれば、それは定常経済しかない。しかし、資本主義が終わるとはどういうことなのだろう。今の資本主義のやり方が終わるというだけではなくて、全く国家や社会の制度や国際秩序が変わるということを含めて語られる。千年、数百年単位の歴史を踏まえた論考だからこそ、現代の状況を大まかに理解できる面白さがあるしためになった。と共に資本主義が終わるとはどういうことなんだろうと思った。