dmachiの日記

読書メモなどです。

読書メモ

『日本資本主義の精神』山本七平1979年。日本の伝統を解き明かしているのだが、例えば、西洋風の神との契約ではない日本の契約。それは共同体の決まりの遵守という形になったり、物事の取り決めという意味では日本では話し合いの絶対化としてそれが行われるという。他にも日本では血縁イデオロギーがあり、純粋な血縁でも地縁でもないと。また面白かったのは、著者の集団の共同体の側面と、機能体の側面の二重の理屈。日本では、集団がなんらかの目的に合致し機能すればその途端集団が共同体となったり、あるいはある機能集団が共同体の維持のみに陥るきらいもあると。
江戸前期に鈴木正三が、経済停滞期の後期には石田梅岩が、経済合理性を含む思想を解いたと。その伝統が昭和まで継続しているという。
文中でちょくちょく指摘されるのが、日本では共同体の維持にのみ注力されてある集団が事実に即して機能しなくなる欠点という問題。
著者は日本の伝統や文化に関心を強く示し解明しようとしている。本の題名が「~精神」で、その精神をロジックで示している。一方で「日本資本主義」の方は、利潤の肯定や倹約や経済合理性の重視などの伝統で示す。
何やらなんとなく思うのはこの世代の人にとって日本文化を解明する仕事は特別なことだったのだろうかと。そもそも資本主義とはどういうものなのかといったところはよく判然とはしなかった。また、日本の共同体が機能不全した場合に、共同体間、集団間の関係がうまくいっていないという要因もあると思われるが、その観点についてはよくわからなかった。不全組織を潰すなり倫理に頼ることでの解決は示されていた。

読書メモ

『昭和史 戦後篇』半藤一利、2006年。沖縄返還までを一応戦後として語られる。そうすると官僚計画経済がまずくなったバブル崩壊までとそれからの歴史も見たくなる。とはいえ歴史は長い、と当たり前ながら思った。昭和以前があり日本以外の歴史もあり政治史以外の歴史もある。ともかく著者は戦前を知る者として語る。共に生きた時代として語られるのが面白かった。

読書メモ

『昭和史』半藤一利、2004年。1926年から1945年まで。通してお話として語られるから概観を理解しやすかった。文中になんてバカな戦争をしてしまったのかとあるが、やはり思うのは、中国に進出していかない選択肢もあり、三国同盟を結ばない選択肢もあり、各戦場で作戦を決行しなかったり早めに撤退する選択肢もあり、対中国アメリカイギリスとの戦争を始めない選択肢があり、始めたらやめる選択肢もあり、しかしその選択肢は選ばれなかったということ。そんなことを思うのは、結果を知り後から見ているからで、後からならなんでも言える。言えるからこそ専門家は色々整理できる。
実際に選択肢は挙げられたにも関わらずそれらは選ばれなかった。それがなぜかはよくわからない。色々な要因は挙げられるけれど。しかしもう今となれば何かが無謀だと知れればやめればいいと思った。

読書メモ

『幕末史』半藤一利、2008年。
面白かったし幕末の大まかな流れがつかめた。語り口がわかりやすい。著者が冒頭で言うところに、薩長史観に対する反薩長史観だと。そんな著者の主観的な感想が人物や事件に対しても言われ、そういうものかと思う。でもそれが変に強調されたりもせず軽妙さと一定の節度と共に進むし、大まかな流れが史実と共に語られ理解しやすかった。近い歴史は人物の発言の記録が詳細に残っているし、現代に馴染みがあるので細かく見れるし面白くもできる、ということもあるのだろうか。

読書メモ

『世界史上』文庫、マクニール2008年。
初版は1967年というからそれなりに古い。とりあえず上巻だけ読んだ。1500年まで。
文明の起こりから真面目に世界各地の歴史が語られてなんとなく全体的に目を通すことができてためになる。
日本についての語りが歴史に無知な私にとっても粗いなと感じるので、他の国や地域もそうだろうなあと思う。ただし、アバウトでも総合的に歴史を知りたいという目的にはかなうので、とりたてて気になるものではなく、膨大な知識が背景にあるのだろうという敬意しかない。緻密な記述の歴史になると長くて読むのに苦労するし。
少し気になったのは、著者の歴史の変遷の解釈には、やや心理的な整理の傾向が強い。まあそれもそういう語り口なのだと受け入れられる。あと国の興亡を主としている。
本書を読んでヨーロッパの発達は新しいことなんだなと思った。中東の古代文明やインドや中国、ギリシャやローマ、イスラムなどの主たる文明の後なんだと。なおかつ10万年の人の歴史がある。その前には数百万年?の歴史があり、生命となると数十億年となる。
また、広い大陸では色んな文化を持つ集団がとにかく様々な形で出くわすのだなと思った。そして争う。だからこそデフォルトの設定が辺境とは違ってきたのかなと思った。思想が強く押し出されてくるというのか。
また、鉄器を使う文化や作られる技術に典型的に見られる、要は技術的な発達は、豊かさへの変化を生むし社会の秩序の在り方を変えてしまうのだろうなと当然ながらも感じた。

読書メモ

『教団X』2014年中村文則。面白かった。宗教や科学や社会についての講釈があるのがためになった。専門的に見てその講釈が妥当かは知らないが普通に小説を楽しみながら読めた。基本の路線は、人の意識や宗教や神、またそれらを洞察する人間について。話が面白くしかし何だか味気が濃いわけでもなく。小説中の神の観念が一義に流れているのかなとも思うがこちらの思慮の浅さかもしれない。ただ教団Xの代表の人物造形は小説ならでは(と思うが)で興味深いものだった。