dmachiの日記

読書メモなどです。

読書メモ

『日本人と組織』山本七平。2007年に出された本だが文章は1970年代後半に書かれたもの。西欧と日本の組織を比べながら、どういったものか、どう考えるべきか、どうすればいいのかが論じてある。日本の組織の行き詰まりという問題意識がある。結論には長期的で基本的な発想として、組織の基本という「本文」と欄外の「注記」を記録して歴史的に参照可能な状態にするということが示される。先例主義により社則を無視していこうとも「注記」があれば経緯を整理でき、その上での判断が可能になるというところだろうか。西欧の場合はバイブルという本文が確固とあり、組織への考え方も規則やルールを確固として守るといった風だ。また神への尊と、組織のルールへの尊の二つへの尊が可能であり、二君に仕えずではないから、ある組織がだめになっても歴史の積み上げの上で別の組織と契約すればいい。日本では組織への尊それのみになるので、状況が悪くなると身動きが取れなくなると。だからといって西欧型が全面的によくて日本型が全面的に悪いという話ではない。日本的な情動的な対応力による成功もある。その前提として、組織が外的成果として求める対象をちゃんと持つ場合というものがある。そしてそうでなければ組織が自転し自己絶対化しやすい。だからこそ欄外の注記が長期的には必要じゃないか。それにより組織が歴史化され、その上で将来への方向性がわかると。そういうところだったと思う。本では組織の自己絶対化への懸念があり、信にかかわるものが肥大化する懸念もあれば、すべてが世俗的になった組織が絶対化する懸念もある。「どうでもいいものとしてそこにある」という絶対的な保証を得たものとしてあるという状態への懸念だ。といったところで、本文と欄外注記という考えが、日本型の場合どうなるのかというところは曖昧だが、欄外的なものの余地を残すことの意味はよくわかる。他に、日本は盆地文化といった指摘が面白かった。京都も奈良も山に囲まれた平地という枠内の文化だと。富山は山岳信仰が遅くまで残った場所らしいが、山があり川が平地を潤し、作物をもたらし、海に流れていくという様がよく見られるという。