dmachiの日記

読書メモなどです。

『性的唯幻論序説』感想

 1999年岸田秀著。あとがきに著者自身の頭の交通整理に性について書いたとあり、その通りに、文章が読者を想定して親切に明晰に説明してあるという風体ではない。雑多な話題をああでもなくこうでもなくと語っている感じ。性にまつわる幻想を時代をさかのぼって論じ、また性差別が無くなってきた時代に至り新たな現象が起こり、そのことを論じたり。その中で日本は恥の文化でその影響を性も受けているという説明の段で、恥は行為そのものではなく、人間関係によるという。唯一の神のいる罪の文化では行為が神との間での審判を仰ぐという。そんな比較をしながら前近代から近代までの日本の性が論じられる。

 著者の『母親幻想』も読んだが、メモしておくと、その中で学校についての章で、昔は学校の秩序のほかにも二つか三つの秩序があり、一つの秩序でのいじめが他の秩序がある分だけの制限がかかったとあった。あと、教育を、ある時間を守らせ、一定の場所に座らせる、その強制が教育で、そんな強制が社会にはあると学ばせることが教育だとあった。また、近代の教育には成長の思想が入ってきて、子供を兵隊たる者として成長させるためのものになったとある。技術の教育だけでなく人格教育が入ったと。寺子屋では読み書きそろばんだった。ただ、子供はある時期になると奉公先でしつけをうけたりしたと。著者は1933年生まれで昔を知る人で、時代の移り変わりを見てきた人で、その目からの視点がためになるところがあった。