dmachiの日記

読書メモなどです。

『ハムレット』感想

 ちくま文庫の松岡和子訳のを読んだ。シェイクスピアの作品はほとんど読んだことが無かった。ウィキペディアを見ると、1600年前後に数十作品を残している。

 ハムレットは悲劇で、近代人的知性を持つと現代では見なされもする主人公ハムレットが、現代人のように苦悩し考え行動する、とよく言われている。とはいえ、近代的といっても、墓掘りの場面での、人の肉体の成れの果て、しゃれこうべが出てきて、それについて語られるところなど、中世的なというか、人の生き死にや自然の営為と人がまだ近い感じもする。状況は当然現代じゃないけど、一人で色々考えるところが現代っぽいのかな。

 また、印象に残ったのは、最後の場面。ハムレットの決闘の場面で、狂気が、全うなる決闘のための、言い訳となる。つまり、ハムレットの罪は狂気のせいになり、狂気をぬけた決闘するハムレットは、正々堂々たる決闘をする者となる。これは、古代ローマにおいて、神の声が罪の行為の理由になり、行為を行った者自身を、その被害者が免責することと形式は同じだ。ソクラテスもデーモンの声をきいた。西洋には、何やら、個人と個人を捉える何かがセットという考え方でもあるのだろうか。近代に理性的個人という考え方が行き過ぎたように見えても、無意識が見出された。というか、そもそもハムレットの物語は先王の幽霊から始まっていた。

 最後の場面は、実際に上演されるとどんなものになるだろうと思った。