dmachiの日記

読書メモなどです。

読書メモ

『乱世を生きる市場原理は嘘かもしれない』橋本治2005年。
・我々の視点で見るという当たり前のことが忘れられやすい。我々は民主主義をまだ自分のものにしていなくて、だから「自分はどこにいて自分のポジションはなんなのか」ということがよくわからなくなる。
・その昔地方は中央のための経済基盤だったが、今や「地方が中央を支える」から「中央が地方を支える」に逆転した。
・投資の現場では、売るか買うかの二者択一の行為が迫られる原理で、その指針に勝ち負けという二分法が必要とされる。
・世界というよくわからない遠くの現実に合わせるより、自分の生きている現実との調和関係を維持構築することが重要。つまりどこでとうなっているかわからない世界のあり方に合わせようとしても合うかどうかわからない。
・独裁者はシステム破綻の危機に瀕したときに登場する。システムの危機とは、たった一つの方向性しか持てなくなってしまっていること。勝ち組を独裁者にして現実をややこしくすることの回避方法は、複数の方向性を持つ世界に変えて行くことで、それがシステムからの脱出。
・今の経済には、利潤を得るという、一つの方向性しかない。経済とはただ循環することで、その一部だけが強調されている。ものや金が動くという行為と連動して、生きることが幸福でありたいという感情が回ること、それが経済という人間行為の本質を示すのではないか。
・国家と経済活動が別々で、その二つが時にタッグを組む、それがエコノミーの本場の国々のあり方。日本では国家と経済がワンセットになっている。そのわかりにくさがある。
・我慢という現状に抗する力。それが我慢が自分と外部の間でどんな位相を持って存在するのかのモノサシ。強要される我慢でなく、いやな相手に我慢を強要されるという現状に抗するための我慢。
世襲が無くなり、職業者として一人前のプロフェッショナルであらねばならないという価値観を含む、社会の基本単位であろうとする義務感が、家の中から家の外に持ち出された。そして社会人としての基本原則が忘れられ、社会が衰弱する基盤になり得た。

◎以前読んだが読み出すと面白くまた読んでしまった。一つの方向性しかないという経済は社会の方向性の狭さを実現している。西洋的な国家と経済が別々というあり方の由来はなんなのだろう。ハムレットが決闘する際に、狂気の振る舞いと、真剣な決闘を別々にしていたのを思い出す。