dmachiの日記

読書メモなどです。

『無名の人生』感想

 2014年渡辺京二著。著者の名は『逝きし世の面影』の評判で知っていたが本を読むのは初めてだった。挙げた本も読みたいが。大連での日々が重くある人生という。80歳の人の経験と教養に溢れた文。暗くじめじめしたところがなく、割合さっぱりと人が生きる道において、要点を所々示す。経験も思慮もまったく及ばないが、でも国家に対する義理というところが気になった。著者の考えでは、人は人と集まり暮らすが、その集まりをさらに括る集まりがあり、その大きなものとして国家がある。だから、国家に対する義理があると。それはその通りだと思う反面、集まりの括りが、社会に数多く重層的にあり、その括りを括る国家があるという素朴な見立てに、どこまで素朴にいられるかと。それは著者の言う趣旨とは違う趣旨だけど、つまり、国家に対する義理は当然あると言っていいけれども、どんな通路を渡っての義理かという、まあ、細かいどうでもいいような話だ。けども人の集まりを括るものが、流動的だったり、新しいものが出てきたり、括りの意味が違う括りがあったりとややこしくなってきている中で、人が集団に義理を示すという単純な作法一つとっても、人さまざまかもしれなくて、まあどうでもいい話と言えばどうでもいいけども。素朴な良心的で物をよく知る人の心情が本書からは垣間見れた。