dmachiの日記

読書メモなどです。

『生きて死ぬ私』感想

 1998年茂木健一郎著。あとがきに著者自身が書くように、等身大の思いにあふれたエッセイ。だからなのか何なのか、びっくりするようなことが書かれてあるというわけではなかった。思いと共に書かれてあるものへの感受性が低いのかもしれないけれど。しかし著者の教養と共につらつらと人生の滋味や思いが書かれ、その中ではキリスト教が宗教的革命として愛という概念を普及させたことが凄いことだという指摘に、そうかと思った。そして現代において、さらなる宗教的な革命が行われ、理想的な社会が訪れるという素晴らしい考えは、それが素晴らしすぎるからと言って、直ちに皮肉めいて否定されたりなどされるものでもなかろうという。養老孟司氏が評で、やがてくる未来には常識となるような新しい世界像を書いていると言っていた。科学的な見方も宗教的なものも文学芸術の示すものも日常の感慨も揃えて語ることができ、そして特別な個人のある一日があるということ、その一日の尊さ、そのようなものか。実際に科学はまだまだ発展していく。予想もつかないことも起きるかもしれないし、新しいことがどんどん科学的に明らかになっていく。その時に、科学的知見と整合する人生への考え方が要請される。それは革命的な考え方かもしれないし、一方で人の生き方に関する単純な考え方かもしれない。と思った。