dmachiの日記

読書メモなどです。

『多神教と一神教』感想

2005年本村凌二著。副題が、古代地中海世界の宗教ドラマ。 メソポタミア、エジプトの多神教の世界があった。そこから、段々と時を経て、一神教が生まれた。その背後には「危機と抑圧」があった。また、アルファベットの開発もあった。詳しい宗教ドラマは、本…

『無名の人生』感想

2014年渡辺京二著。著者の名は『逝きし世の面影』の評判で知っていたが本を読むのは初めてだった。挙げた本も読みたいが。大連での日々が重くある人生という。80歳の人の経験と教養に溢れた文。暗くじめじめしたところがなく、割合さっぱりと人が生きる道に…

『日本の崩壊』感想

2018年御厨貴、本村凌二著。日本の近代の政治の歴史が主に語られる。 印象に残ったのは、1930年代にとにかく多国間の協調の世界のシステムができあがっているところに、元老がいなくなった日本の政治部門は世界の現状認識が至っていなかったという指摘。元老…

『日本史のなぞ』感想

2016年大澤真幸著。面白い。副題が、なぜこの国で一度だけ革命が成功したのか。その一度だけの革命を行った人、その行い、その歴史。その着想が面白くわくわくさせられるし、その中身を論じる中で歴史の勉強もできる。考えてみれば、朝廷のある西と、朝廷の…

『日本人の心』感想

1984年相良亨著。題がそのものずばり。古代、中世、近世、近現代の日本の文献を元に、そこに表れているこころを論ずる。章立てが、交わりの心、対峙する精神、純粋性の追求、道理の風化、持続の価値、あきらめと覚悟、死と生、おのずから。 読んでから時間が…

『どんなことが起こってもこれだけは本当だ、ということ』感想

2018年加藤典洋著。人を動かす思想は二段構えだという。一階が、普遍的な地べたのもの。二階が論理的なもの。 幕末の尊王攘夷から尊王開国に変わっていった薩摩や長州を例に上げる。また、敗戦後の日本の護憲と、もう戦争は嫌だという思想を例に上げる。正義…

『amazon』感想

2018年成毛眞著、副題が、世界最先端の戦略がわかる、と。amazonという企業、組織がどういうものかを記してある。ローマ帝国のようだと何か所かで喩えている。会員数が世界で一億人以上、従業員数が50万人以上、その数は今後更に増える。その帝国的な拡張の…

『暴力はどこからきたか』感想

2007年山極寿一著。霊長類学の研究が語られる。詳細に霊長類の群れの仕組みや食をめぐる動きや性をめぐる仕組みや群れ内外の葛藤のことが語られる。それを元に人類のことが語られる。 大まかには、食と性と外敵の捕食者が群れ方の性質を決めて、群れの争いの…

『性的唯幻論序説』感想

1999年岸田秀著。あとがきに著者自身の頭の交通整理に性について書いたとあり、その通りに、文章が読者を想定して親切に明晰に説明してあるという風体ではない。雑多な話題をああでもなくこうでもなくと語っている感じ。性にまつわる幻想を時代をさかのぼっ…

『一神教VS多神教』感想

2002年岸田秀著。主に一神教の話が多く、否定的な話。差別されたことから一神教が始まり、血縁と切れたリーダーや地縁から切れたところや文字の機能によって、抽象的な神が生まれたという。差別から始まったので、その後も、その怨念で他の宗教を認めず排撃…

『江戸の思想史』感想

2011年田尻祐一郎著。タイトルの通り、江戸の思想をその時期の社会背景と共に紹介してくれる。あとがきに、思想家の思想と全体の思想史を共に面白く表したいとあったがその通りに面白かった。色々な人が色々考えていたのがわかる。仏教や儒教や道教や神道や…

『「あの世」と「この世」のあいだ』感想

2018年谷川ゆに著。平田篤胤の研究の著作のある著者の、日本各地の神のいる場所を旅した記録。近代の自然と離れた都市の中に暮らし、政治や経済を中心とした都市社会で暮らす者が、今も残る自然や神や死者と人が響き合う場所に向かう。何万年も人は自然と共…

『神は詳細に宿る』感想

2019年養老孟司著。雑誌に寄稿した文章をまとめたもの。一番最初の「煮詰まった時代をひらく」という文章が、今の時代をまとめて語っていて面白い。他のはいつもの養老節の調子を現在の雰囲気で語る。その中で印象に残った言葉を挙げると、「人生の意味は自…

『日本思想史の名著30』感想

2018年苅部直著。タイトル通り30冊紹介してある。「古事記」から、中世、近世、近現代のものまで。思想といえば、近代の印象が強かったが、江戸の思想が面白そうだった。伊藤仁斎や荻生徂徠や山片蟠桃や。江戸の人も様々なことを考えていたことを知ると、そ…

『荘子』感想

老荘思想の荘子。まあ面白い。荘子は紀元前300年くらいの人。その荘子が昔の人は偉かったという。『教養としての世界史の読み方』に二分心という概念が出ていたのを思い出した。古代の人は、神の声を実際に聴いていて、その心は、現代の人間の意識とはまるで…

『希望のビジネス戦略』感想

2002年の金子勝と成毛眞の対談。私は経済もビジネスについても全くの無知なので、話の内容の理解ができないところもあったけど、何となく実際の経営者と経済学者が語る話からどういうものかを類推しつつ読んだ。印象として、金子勝氏は経済やビジネスが語ら…

『不干斎ハビアン』感想

2009年釈徹宗著。1600年前後の信仰に生きた男の話。元は禅僧で、棄教しキリシタンになり、仏教儒教神道を批判してキリスト教を護教した『妙貞問答』を書き、その二十年後にキリスト教を棄教し『破提宇子』で批判を行ったハビアンという人の話。 彼についての…

『いきなりはじめる仏教入門』感想

内田樹、釈徹宗著のネット上でかわされた文章をまとめたもの。だけどちょこちょこ入る釈氏の宗教や仏教の初歩的な解説がありわかりやすい。「宗教とは、聖なる領域をもち、人間の行為や思考に意味を与え、行動様式を形成する体系」と理解されると釈氏の言葉…

『夢酔独言』感想

勝子吉の語る自伝。不良具合が面白い。侍だが、幕府にお勤めをする職にはありつかず、商売をやったり、もめ事をまとめたり。1840年頃のものと思うが、江戸の後期、維新の前、この本を読むと改めて、士農工商の身分制度の堅牢さを知る。農民の前で芝居を打っ…

感想『教養としての世界史の読み方』

2017年本村凌二著。著者は古代ローマ史が専門の歴史家。歴史を知っている人の深みを感じた。歴史の見方に厚みがある。錯綜する視点が著者の論点によって巻き上げられている。だからこの本から学べることは多いけど簡単に学べなあとも思った。色々初めて知る…

『日本人はなぜ無宗教なのか』感想

1996年、阿満利麿著。著者は、キリスト教や仏教など特定の人物が特定の教義をとなえそれを信じる人がいる宗教を創唱宗教、自然発生的にひとりでに続いてきたものを自然宗教とわけている。 日本では自然宗教がありながら、日本人はそれを自覚していない、それ…

『貧乏は正しい!ぼくらの未来計画』感想

橋本治著、文庫で読んだが、1999年のもので、単行本が1996年、雑誌連載が91年から95年。第一章が「資本主義はもう終わっているかもしれない」で、その結末に、バブル崩壊後には「不景気からの脱出」はもうないと書いてある。不景気も好景気もないと。実際そ…