dmachiの日記

読書メモなどです。

読書メモ

『民主主義のつくり方』宇野重規2013年。・ウィリアムジェイムズは自らの経験論を「純粋経験」と呼んだ。それがありその後から人間の意識が生まれ、世界を再構成する。それは個人の心の出来事ではなく、個人に属するものではない。その見方は、ベルクソンの…

読書メモ

『砂糖の世界史』川北稔著1996年。 とても面白かった。「世界商品」としての砂糖、あるいはタバコやコーヒーや茶などを巡る状況、16世紀以降の西ヨーロッパ各国の動きが語られる。 国を中心とした歴史でなく、当時の生活事情が語られる中で、現代と当時の違…

読書メモ

『蜘蛛の糸・杜子春』新潮文庫、大正七年から十二年までの作品の中から児童向けのものが集められている。「蜜柑」や「トロッコ」や「仙人」など特に印象に残った。文学はあまりわからなかったが、面白がれるものもある。ある人にとってある種の本がいかなる…

映画メモ

・「運び屋」2018イーストウッド。面白い。本筋とは関係なく気になったのは、主人公が、契約を裏切り、裏切った相手に対して、契約違反だから好きにしろ恨みもないと話す場面のこと。契約履行か不履行か。私的な諸事情などは関係ない。契約関係を交わした相…

読書メモ

『21世紀の脳科学』、原題が「SOCIAL Why Our Brains Are Wired to Connect」2015年(日本)。以下メモ。 ・自分を取り巻く周囲の環境や人間関係において他者や状況を理解したりどう行動するかを思考することを「社会的思考」、論理的思考や抽象的思考などを…

読書メモ

①『痴人の愛』、1924年から25年にかけて発表されたらしい。私小説風の形で倒錯的な男女の関わりが書かれているが、その倒錯の加速に対し、講釈なり解釈なりの文はあからさまには無く、一読者としては主人公の振舞いになぜそうなっちゃうのかとつっこまずには…

読書メモ

『幻燈辻馬車』山田風太郎著1976年。 自分の手を汚さずに、愛する女を利用し堕落させようとし、というより愛していないからこそ自分の手はきれいなままにして、理想のために女を堕落させることさえする、そういう人間のやることと言えるのかという様。とか、…

読書メモ

『人類の起源、宗教の誕生』2019年 神学、宗教学者と人類学、霊長類学者の対談。 メモ。(数字部分は自分) ・「仲間が持ってきたものを食べるということは、その仲間に命を預けるということに近いわけですよ。」 ①待っている仲間への共感、想像力。仲間が食物…

読書メモ

①『国家を考えてみよう』橋本治著、2016年。 以下メモ。矢印以降は自分のコメント。 ・日本の封建制度はギブアンドテイクの「土地を所有しなくても保証する」というシステム →社会契約的で、個人所有より保証を求めるマインドのニュアンスがあるようだ。 ・「えら…

読書メモ

『今昔物語集』。角川ソフィア文庫で読む。解説が一昔前の凡庸さと言えば言葉は悪いが、無論その知識や背景の説明はためになるものの、ベタな人間ドラマに回収してしまうような、お説教にならないようにしつつお説教でまとめているような感じで、現代語訳も…

読書メモ

①『橋本治と内田樹』2008年。タイトルの二人の対談だけどけっこう長い。雑多な話題。その雑多でとりとめもない話だからまとまりがないという欠点があると言えるが、そんな話の流れの中の言葉だからこその受け取り甲斐もあるかと思った。私が二人の文章を多少…

読書メモ

『じぶん・この不思議な存在』鷲田清一2007年。 以下メモ。 ・人生とは、ある意味では、こうした「じぶんに語って聞かせる説話」が自他のあいだでたがいに無効化しあう不協和のなかにあって何度も何度も破綻する過程であり、またそれをたえず別のしかたで物…

読書メモ

①『日本の難点』宮台真司2009年。えらく幅広い領域の物事が語られる。人という存在のことから法律のことまで。学問の知見を通して語られる。よくここまで語れるな凄いと思った。利他的な凄いやつが感染を引き起こすという考えが所々に出される。幸福とは何で…

読書メモ

①『戦中派天才老人山田風太郎』関川夏央、1998年。おそらく1995年に関川夏央が山田風太郎宅を訪ねて話したもの。日本は脆い国で(当時において)史上最高の状態だがそれが十年二十年ともつわけがないと山田風太郎が言う。山田流の言い方で、著者がはじめにに…

読書メモ

①『死なないでいる理由』鷲田清一。2008年。全体的な語りの論調はまとめきれないが、人の生き死にがテーマでもあり、成熟や幸福や家族の話もある。この本で「生きていることは生きていないということより価値がある、在ることは無いことより価値があるといい…

読書メモ

①『父権制の崩壊 あるいは指導者はもう来ない』2019年。橋本治著。既に終わっていた家父長制が人々の幻影としてあったがそれも終わったという話。それは家という制度の崩壊でもあり、上下関係を成り立たせていた現実の崩壊でもある。そこで問題は上下関係の…

『臨床とことば』メモ

河合隼雄と鷲田清一による対談と短い論考が載っている。対談は凄かったというしかなく、なんといえばいいか、両者の話は人間理解への視座が繊細で豊かだ。そして、両者は臨床というところで、具体的な経験の中で培ったものから語る。実践を生きること自体の…

『宗教なんてこわくない』感想

文庫で1999年、橋本治著。三回目くらいに読んだが凄かった。著者は、オウム真理教の起こした地下鉄サリン事件の後に、オウム真理教について書く、というところから本書を書き始めているが、その視野は広く、仏教やキリスト教や日本の歴史や社会を見渡し、ど…

映画メモ

「兵隊やくざ」1965年。勝新の喧嘩相手へのいたぶり方がとんでもなかった。 「兵隊やくざ」1972年。65年のとは違い音楽がハモンドオルガン的な音色のメロウなものになっていて映像と合っているのかそのズレを楽しむべきものとして合っているのかよくわからな…

『ハムレット』感想

ちくま文庫の松岡和子訳のを読んだ。シェイクスピアの作品はほとんど読んだことが無かった。ウィキペディアを見ると、1600年前後に数十作品を残している。 ハムレットは悲劇で、近代人的知性を持つと現代では見なされもする主人公ハムレットが、現代人のよう…

映画メモ

『黒い雨』今村昌平、役者がいいし面白い。 『青空娘』増村保造、話がきっちり。 『原爆の子』新藤兼人、たんたんと。 『人間の條件』さすがに九時間は長かったけど飽きない。人間の当たり前の理想を追い求める姿と、過酷すぎる状況。正義を抱える主人公の姿…

『天然知能』感想

2019年郡司ペギオ幸夫著。物凄く面白い本なのだけれど、読んでいる時は、それなりに集中しており、論じられていることについていく。のだけれど、読んで間を置いてみると、何の話だったっけともなった。普段考えていることと異なる水準の思考なので、忘れて…

映画の感想メモ

『そして父になる』是枝監督。面白く、ピアノの音楽がよかった。いいなと思ったらクラシック。『万引き家族』や『歩いても歩いても』や『海よりもまだ深く』を先に見ていて、同じ家族もののそれらよりも生々しい言葉の綾とその場の空気の揺れを描くことには…

『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』感想

2002年橋本治著。三島由紀夫をめぐる論が初めから終わりまで続く。理路は明快とはいえ、その全体をきちんと読んで理解することからして僕には難しく、ただところどころにある著者の論旨をまとめる言い回しが印象に残った。例えば、「『仮面の告白』の「私」…

『生きて死ぬ私』感想

1998年茂木健一郎著。あとがきに著者自身が書くように、等身大の思いにあふれたエッセイ。だからなのか何なのか、びっくりするようなことが書かれてあるというわけではなかった。思いと共に書かれてあるものへの感受性が低いのかもしれないけれど。しかし著…

『小林秀雄の恵み』感想

2007年橋本治著。著者は小林秀雄論というよりは、小林秀雄の思想を必要とした時代や人々に関心があるという。そのために『本居宣長』のテキストを中心にして、そのテキストや小林秀雄を読解していく。一言でいえば彼の思想は、「読むに値する本を読め」だと…

『ためらいの倫理学』感想

2001年内田樹著。戦争や性、語り口の問題、物語の周辺についての論考集。書かれてあるのは、解説にあるが、極端でないものの考え方による論。極端でない考え方でいかに物事を理解できるのかというようなもの。でも極端でない考え方ながら徹底的に物事に切り…

映画の感想

『ドラゴンタトゥーの女』は2011年デヴィッドフィンチャー監督。スウェーデンが舞台。お金持ちの家系にある謎を、ドラゴンタトゥーのある女とジャーナリストが解いていく。面白い。 『ゴーンガール』もデヴィッドフィンチャー監督。2014年。アメリカの夫婦喧…

『脳と仮想』感想

2004年茂木健一郎著。脳という物質的要素で捉えられるものと、近代科学の物質に還元して法則を立てる方法では説明できない意識やクオリアというものがあり、仮想として人が持つものを手掛かりにしながら、人というものを脳やクオリアと絡ませながら語る。 普…

『資本主義はなぜ自壊したのか』感想

2008年中谷巌著。生産と消費の分離をその特徴の一つとするグローバル市場主義、新自由主義が批判され、アメリカや日本の文明を論じ、資本主義はもううまくいかないので、日本としては歴史的な自然との調和の文化の特徴をいかして環境保護先進国を目指すべき…